■ 開催概要

  • 日時:令和8年3月5日(木) 13:30~16:15
  • 形式:オンライン(Zoomミーティング)
  • 主催:一般社団法人 青森県保育連合会
  • テーマ:~これからの保育事業経営を考える~
  • 目的:会員施設の管理者・運営者等を対象に、保育をめぐる直近の話題や情報の提供、会員相互の意見交換を行う。今回は、会員施設が直面しがちな課題について、それぞれの職務経験や実践研究を通して学んだ成果を共有することを目的とした。
  • 開講挨拶:青森県保育連合会 副会長 齋藤 憲法 氏

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■ 発表1:最新!保育人材の確保と定着を探る
(全国保育協議会 人材養成会議参加者 /
幼保連携型認定こども園ちとせ幼保園 副園長 草刈 淳之助 氏)

本発表では、全国の園を対象に実施したアンケートを基に、経営者と求職者の間にある「意識のズレ」を分析し、人材確保と定着のヒントが提示された。

  • 求人ツールのズレ:経営者はハローワーク(75.3%)や学校求人票(46.4%)などの公的・正式ルートを重視する傾向にある。一方、既存職員や新卒職員は、知人の紹介、実習、職場見学といった「人との繋がり」や「実体験」を重視して入職を決めており、学校求人票だけでは情報が十分に届いていない実態が明らかになった。
  • 重要視する項目のズレ:全層で「職員の雰囲気や人間関係」が最重要項目(管理者52.6%、既存31.1%、新卒46.2%)であった。しかし、新卒者は「施設設備等の環境」や「第一印象」を非常に重視する一方、既存職員は「通勤のしやすさ」や「休暇の取りやすさ」など、生活と両立できる現実的な条件を評価している。
  • 戦略のポイント:採用は求人票だけで決まるものではなく、実習対応や見学時の印象、SNS等での日常的な情報発信が有効となる。また職場環境を整え、職員が自ら「知人に勧めたくなる職場」を作ることが、最大の採用・定着支援に繋がると結論づけた。

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■ 発表2:理想論では語れない『誰でも通園制度』 ~ 現場の負担と、それでも見えたもの ~
(社会福祉法人共愛会 理事長 / 幼保連携型認定こども園いしえこども園 藤元 大輔 氏)

令和8年度から本格実施される「こども誰でも通園制度」を実施するに至った経緯、また実施する中で直面した課題をどう解決し、さらには園全体への波及効果について等の報告がなされた。

  • 「いしえ式」運用の工夫:制度導入にあたり、新たな料金設定の手間を省くため、既存の「一時預かり」の料金体系や申請書類を流用することで現場負担を軽減した。また、青森市独自のルールとして、利用園を1箇所に固定することや、事前の聞き取り調査の実施などを自治体と協議して進めている。
  • 現場の反応と課題:職員からは、慣れない子どもの受け入れによる多忙化や、行事等で希望日に対応できない心苦しさなどの意見も出ている。一方で、定期利用により子どもが園に慣れ、成長する姿を見ることへのやりがいや、保護者への専門的なアドバイスが可能になるなどの成果も報告された。
  • 本質的意義:本制度は単なる預かりサービスではなく、家庭の孤立防止や早期支援の受け皿となるものである。完璧を目指すのではなく、園の状況に合わせて「続けられる形」で地域に関わっていく姿勢が重要であると説いた。

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■ 発表3:キッズルーム×カフェ 誰もがほっとできる、第2のリビングを目指して
(社会福祉法人大洋会 はまゆりこども園 園長 石川 清香 氏)

階上町に安全な子供の遊び場が少ないという町民ニーズ(町民アンケート第1位)に着目し、法人独自の資金で建設した多機能施設「スターランド」の事例が紹介された。

  • 設立の困難と克服:補助金要件に合致せず、法人独自資金での建設を決断したが、銀行融資の段階で「担保対象がない」と難航した。地元の会計事務所の助言を受け、別の地域に根差す銀行からの無担保融資により着工に至った。また、固定資産税の課税問題も、建物の用途を「認定こども園の付帯施設」として明確化することで非課税措置となった。
  • 施設の機能と成果:親子で遊べるキッズルーム(未就学児無料)と、誰でも利用できる低料金のカフェ、相談室を併設。月間約400名が利用し、子育て世代だけでなく高齢者も含め地域の居場所にもなっている。
  • 経営の現状:月々の収支は大幅な赤字であるが、利用者からの「この場所に救われた」という深い感謝の声が、職員のやりがいや地域における園の新たな存在価値を創出している。

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■ 参加者へのメッセージ:保育士のプロ意識と行動指針
(あおもり保育未来塾 塾長 藤田 俊彦 氏)

セミナーの締めくくりとして、プロの保育士として同僚・保護者・子どもから信頼されるための具体的な指針が提示された。

  • 対同僚・社会人として:チーム保育の基盤である「報連相(報告・連絡・相談)」を怠らないこと、および周囲に悪影響を与えるネガティブな発言を慎むことの重要性を説いた。
  • 対保護者:保護者は子どもを共に育てるパートナーであり、挨拶の徹底や、専門知識を押し付けない寄り添う姿勢が不可欠である。特に持ち物の連絡忘れなどは不信感に直結するため、丁寧なコミュニケーションを求めた。
  • 対子ども:特定の子どもを可愛がる「えこひいき」をせず、全員に平等に接すること、および「褒めることと叱ることのバランス」を保つことが大切である。常に笑顔で接することで、子どもに安心感を与える役割を果たすべきであると強調した。

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■ まとめ

本セミナーを通して、これからの保育事業経営には、現場の保育者が「保育が楽しい」と感じられる環境を整え、その魅力をSNSや体験機会を通じて地域に可視化していく発信力が不可欠であることが共有された。また、制度や経営の困難があっても、地域ニーズに真摯に応え続けることが、結果として「選ばれる園」への近道となることが示唆された。