研修会名:令和6年度 主任・主幹保育者研修会
日時:令和 6年 8月 28日(水) 10:20~15:00
場所:ホテル青森 3階 孔雀の間
講師:鎌倉女子大学児童学部 准教授 榊原 久子 氏
演題:保育者の専門性を活かした保育ソーシャルワークとは
鎌倉女子大学児童学部 准教授 榊原久子氏を講師に迎え、保育者の専門性を活かした保育ソーシャルワークについて、講演が行われた。
午前は現在の社会情勢における子育て支援の必要性について、わかりやすく説明があった。女性が社会に進出することによって、高齢出産が増え、不妊治療やハイリスク出産も増加し、低体重での出生に伴い発達障害を携えて生まれてくる確率も高くなっている。また、産後うつの発生頻度が母親のみならず、父親にも同等数あるという。父親は、支援する人であって、支援を受ける対象ではないと認識されている現状がある。
お迎え時などに家での様子を聞くことで、育児に対する不安や疑問など、「わからないこと」がわからなかった保護者の気づきにつながり、親として育つチャンスになる。そして保護者の気持ちに寄り添って言葉がけをすることが、子育て支援の一環となり、近くに声をかけてくれる大人がいることで、孤立感を防ぐことができれば、虐待防止にもつながっていく。子どもの最善の利益を保障するために、保護者を支援する必要がある。
今後こども園は、養育者にとって安心安全な場所になるために、地域においてかかりつけ相談機関としての大切な役割を担っていかなければならない。保護者や子どもたちの安心できる場所になれるよう、保育者も学びを深め、見解を拡げていくことの重要性を感じた。
午後は乳幼児期の育ちの保障について講義が行われた。
育児グッズが便利になった反面、運動機能の低下が見られるなど、新たな課題となっている。五感を刺激することで子どもの脳を育て、心が育っていく。3歳までに脳の80%が形成されるという。安心安全が保障され、満たされていることで、人格の土台が作られていくことから、愛着形成(アタッチメント)が重要となってくる。子どもが求めたときに、養育者から速やかに十分なスキンシップを与えられることが重要であるという。
専門職として保育者がヒューマンスキル(対人関係能力)を身につけ、保育の日常において相談支援(ソーシャルワーク)を行っていくことにより、子どもの育ちや保護者の支援につながっていく。コミュニケーション力を高めるテクニックとして以下の4点があげられる。
①信頼関係を作る~相手をリスペクトする(バイステック7原則)
・個別化…相手をこじんとしてとらえ、一人ひとり違うことを認識して尊重する
・意図的な感情表出…相手の感情を大切にし、自由に感情を出せるようにかかわる
・統制された情緒的関与…援助職は自身の感情をコントロールする
・受容…相手の態度や行動を感情的にならずに受け止める
・非審判的態度…援助職の価値観や倫理観によって相手を一方的に非難しない
・自己決定…自分自身で選択と決定が行えるように支援していく
・秘密保持…援助の過程で知り得た秘密を厳守して信頼関係を作り上げる
②聞き上手になる技術を身につける
③伝え上手になる技術を身につける
④共感上手になる技術を身につける
あたりまえに行っていることを、意識して行うことで技術(専門性)になる、無意識ではだめなのですよ、という榊原先生の言葉に改めて身の引き締まる思いがした。
保育は子どもの脳を作り、保育者は「対人援助職」であるという。子どもたちの人生にとって大事な乳幼児期を、共に過ごす私たちの責任は重大である。「子育ては、やったことのないスポーツでレギュラーになるようなもの」という例えのように、不安やプレッシャーが大きくのしかかっている保護者の気持ちに寄り添いながら、信頼関係を築き、保護者や子どもたちの安全基地になれるように努めていきたいと思う。