研修会名:令和6年度 保育者研修会
日時:令和 6年 9月 20日(金) 9:50~15:00
場所:ホテル青森 3階 孔雀の間
講師:玉川大学 教育学部 乳幼児発達学科 教授 大豆生田 啓友 氏
(オンライン講演)、
幼保連携型認定こども園チャリティー第一保育園 園長
(あおもり幼児教育アドバイザー) 黒沢 のぞみ 氏
演題:「記録と対話のツールとしてのドキュメンテーション」
「子どもの姿と内面理解」

記録と対話のためのドキュメンテーション    =保育の質の向上に向けて=

ドキュメンテーションは「毎日の記録」「写真記録」

子ども真ん中社会の為のツール

みんながわくわくする為のツール

 

ドキュメンテーションを実施済・実施したいと思っている園は約8割

ドキュメンテーション導入の背景にあるもの

写真で記録する事により、日誌にもなり、記録(連絡帳)にもなり、個人の記録(監査が良ければ)にもなり、掲示物にもなり、職員の対話にもなる。

ドキュメンテーションを親への発信物に使っていないのは、もったいない。

 

魅力的な園はどこが違うか?

子どもがワクワク

職員がワクワク

保護者がワクワク

地域の人や個々に集う人たちがワクワク

 

事例①   0歳児 心がつながる瞬間に

2年目の職員、初めての0歳児

母子分離初日からずっと泣いているT君  まずは、T君の気持ちを精一杯受け止める。

受け止めるだけでは十分ではない。 どういう時に機嫌が良く、どういう時に機嫌が悪いのか、書き出してみる。(ウェブ)そのことで見えてくる子どもの姿がある。

様々見えてきた物を、保護者にも伝える。保護者の方からも「~が好きです」「~の時は機嫌がいいです」など、子どもの姿をお帳面で書いてくれるようになった。

・保育園はサービス業ではない。サービス業だと保護者もいろんなことを要求してくる。

・ただ預かるのか、子どもの姿をとらえるのか。

落ち着かないクラスはコーナーを作っていない。開けているところが多かったので、コーナーを作ってみた。コーナーが安定スポットになって、子ども達が安定して遊び込めるようになった。

 

事例②  写真記録(ドキュメンテーション)の活用による保育の質の向上

A園の場合

・どこを撮ってよいかわからない。

→先生が子どもの姿に心が動いていない。→意識していない保育をしている。

・保護者からあまり反応が無い

保護者からあまり反応が無くて当たり前。保育者がワクワクしなければ伝わらない。

 

・制作に時間がかかる。

中身で勝負! デコる必要はない。

写真  始めは「~してました」の写真になりがち。明日の保育に繋がらない。

→数か月で変わった。

・子ども達の目線の方を捉える。

・どんな風に子ども達が楽しんでいるか。興味・工夫があるか。

・子ども達がどうなっているかを捉えることが大事。←子どもの興味関心から捉える。

 

◎子どもの興味関心を見逃さない。

◎子どもの声を拾う。

◎どんな工夫をしているか。

◎環境をどうやって使っているか。

◎どんな子ども同士の人間関係があるのか。

◎何をのり越えようとしているか。

◎何を子ども達が言葉にしているか。

◎どんな遊びの発展があるのか。

 

【保育が明らかに変わっていく】

事例1   夏フェス2020  路上ライブ  特設ステージ

3歳児の活動が、4・5歳にも広がった。

子ども達のワクワクが先生にも伝わり、保護者にも伝わる。

サービス型と共生型の違い

 

記録を書く上で大切なこと

・子どもがワクワク、先生がワクワクするような保育をしていますか。

・記録が自分の気持ちが動いたものですか。

・「~しました」は記録でしか過ぎません。子どもがどんな関わりがあったか。人間関係は?環境は?

・明日の計画に繋がっているか。

 

「自己評価」やめてみませんか。

 

青みかん「ぱっかーん」

0.1才児クラス

散歩お出かけ計画  フォークリフトを見に行こう!

・途中かたつむりを見つける。  散歩は途中を楽しめるかどうか。

・青ミカンを見つける。知り合いのおばあちゃんだったので、1個もらう。

明日の保育に繋げよう!

・青い

・匂い

・皮の固さ

・切ってみる!!  ぱっかーん  食べてみるすぱーーーい!!

 

それから、畑で穫れた野菜は切ってみる。断面を楽しむ。

◎ドキュメンテーションを保育室に貼っている。子ども自身が自分を取り巻く社会を見る。

 

ドキュメンテーションの作成について

・1人1台カメラ

5歳児みかんプロジェクト

おやつにシュークリームとみかんが出る。

みかんの皮を持ち帰る。先生:「おふろにいれてみてね」

・家でもやってみる。

・子どもは色々保護者に言われる。

・やらなかった事で、保育士が子どものつぶやきを拾う。

できなかった子に対し先生は、「足湯って知ってる?」→たらいを探し始める。給食の先生も巻き込み、みかんを貰う。 足湯をやってみる。

 

ドキュメンテーションを見て、子どもが親に説明している。ワクワクして、目を輝かせながら、説明している姿に職員もワクワクウキウキする。

 

かけはしプログラム・・・座れる・静かに出来るだけでなく「自分を発揮できる」が一番大事な事!

 

質疑応答

○ドキュメンテーションの良い所やデメリットを知りたい

  • やったことないので不安やデメリットを考えてしまう。研修にも1人ではなく数人で受ける事で、取り入れやすくなる。写真を撮ってみて保護者に見せてやってみる。自分から始めてみる。しかし、園全体でやらなければならないのなら、園長にやったみたい気持ちを伝える。

 

○ドキュメンテーションを連絡帳に移行していく。どのようにしていくのか。コドモンで計画をするが、自己評価を書いて印刷して、その、自己評価を消して、保護者に公開している。

  • 自治体によっては、ドキュメンテーションが監査の資料の対象となる事もあるので、自治体に確認と、コドモンに確認するのが良いと思う。

 

○コドモンのドキュメンテーションを使っていないが、週案等は使っている。みんな一斉に進めることは難しいと感じている。出来るところから始めたいのですが、どうしたらいいですか。

  • 出来るところからやります。只今実験段階です。とする。出来ない職員には手伝うスタンスを忘れない。

◎保護者にサービスではなく、ファンにさせる。という言葉がとても良かった。

◎写真を玄関に貼っている。子どものつぶやきをもっと拾って掲示していきたい。

 

午後は

幼保連携型認定こども園チャリティー第一保育園 園長

あおもり幼児教育アドバイザー 黒沢 のぞみ 氏 を講師として

「子どもの姿と内面理解」というテーマで講演を行っていただきました。

はじめに「3つの種」として

・これまで、子どもの学びにおいて、どのような事を大事にしてきたか

・今の所属・立場で、子どもの学びをめぐって取り組んでいること

・これから、子どもの学びに関して、どんなことに取り組んでいきたいか

を、それぞれ考え、テーブル毎に自己紹介を兼ねながらグループワークをしました。

 

次のワークではある事例から遊びの姿を読み取り

・見取った姿・場面

・そこに捉えた学び

・支えとなる環境や援助について

を、考えたあとクロスグループ(年齢、経験年数混合)となり互いの考えを共有し合いました。

 

最後には、スクリーン鑑賞を行い、園での遊びが学びの芽を育むために重要であり、

  • 学びに向かう力、人間性
  • 知識及び技能
  • 思考力、判断力、表現力

といった3つの柱を幼児期の生活を通してバランスよく育んでいくことの重要性を学びました。

 

大豆生田先生や黒沢先生の言葉にもありましたが

「子どもがワクワク 保育者もワクワク 保護者もワクワク」

するような質の高い保育を心掛け、子どもが発達に必要な体験を積み重ねていけるよう工夫し、子どもの育ちの姿とその意味にも目をむけながら、小学校の学びへとつなげていきたいと思います。