▶令和7年度 保育・未来フォーラム
日時:令和7年10月24日(金)10:00~15:30
場所:ホテル青森 3階「孔雀の間」

- 目的
本会では、会員施設の管理者・運営者等を対象に、保育をめぐる直近の話題及び情報の提供や会員相互の意見交換等を目的として、標記フォーラムを開催しております。今回は、こども家庭庁による最新の保育制作の動向の説明、こども誰でも通園制度モデル事業実施園による実践報告、不適切保育発生時の緊急対応等について、幅広くかつ深く学ぶことを目的に開催するものです。
10:10~ 基調報告「保育政策のこれから」 こども家庭庁成育局保育政策課 課長補佐 西浦 啓子氏

・第1章から第3章の大きなテーマを基に保育政策のこれからについて情報提供いただく。第1章ではこども家庭庁の創設とこども政策の推進~こどもまんなか社会の実現に向けて~と題し令和5年4月からのこども家庭庁の役割や基本姿勢についてご説明があり、こども基本法・こども大綱・こども未来戦略についてのこれまでの経緯を詳しくお話しいただく。第2章ではこれからの保育政策~保育政策の新たな方向性(令和6年12月からの変更点)について1から3のテーマ別に最新の情報をご提供いただく。
テーマ1の地域のニーズに対応した質の高い保育の確保・充実については新子育て安心プランの概要説明や令和7年4月の待機児童数のポイントをお伝えいただき、平成29年のピーク時に2万人を超えていた待機児童数が2千人台にまで減少した経緯について見解を述べられる。また、保育の質について、ミドルリーダーの活躍による保育の質向上推進事業についても触れ、地域全体の保育の質の向上を図る新たな仕組みを創設する事業内容説明もされた。こども性暴力防止法の概要についても趣旨や対象事業者、対象事業者の責務等のご説明もされ、防止措置の義務化についてもお話いただく。テーマ2のすべてのこどもの育ちと子育て家庭を支援する取組の推進では最新のこども誰でも通園制度についてその意義や実施状況速報をご紹介され、令和8年4月からのすべての市町村において実施するための本格実施に向けた準備事務フローをご説明いただく。また、障害児支援のこれからとして、インクルーシブ保育の基準改正やインクルージョンの推進イメージもご紹介いただく。テーマ3の保育人材の確保・テクノロジーの活用等による業務改善では処遇改善の一本化についてや、新たな継続的な見える化の制度における報告・発表のあり方についてご説明いただく。保育現場でのDXの推進についてでは、保育ICTラボ事業の目的や概要、実施事業のご紹介もあった。第3章では令和8年度予算概算要求について8項目の概算要求内容をご説明いただき講義を終了する。
11:45~ 実践報告「こども誰でも通園制度施行的事業の実践報告」 こばとこども園園長 飯田 由紀氏

・こども誰でも通園制度を青森県内でいち早く試行した八戸市の現状と今後の目指す姿についてお話いただく。誰でも通園制度の創設背景として、保育所に通っていない0歳6か月から満3歳の子どもを対象とした保育園の理解を促す制度として段階的に実施されるもの。従来の一時預かり事業は保護者の「ご都合」(リフレッシュや急な用事など)に対応する一時的な支援であることに対し、こども誰でも通園制度は保護者の状況に関わらず、「すべての子どもの育ちの機会を保障する」ことが一番の目的である。継続的な利用を通じて、子どもたちとの信頼関係を築き、質の高い通園支援を行うための「成長のきっかけ」であり、月10時間は単に預けるためではなく、子どもの健やかな成長を将来にわたって支える大切な時間として育みます。制度の目的と全体像について、「こどもの育ちの支援」「保護者のサポート」「地域の子育て環境づくり」の3つの柱をご説明いただく。八戸市の導入までのスケジュールと園のこれまでのあゆみの紹介から令和6年6月にこども誰でも通園制度施行的事業への参加についての決め手となった「子ども家庭庁が掲げるはじめの100か月の育ちのビジョン」に深く共感したことをご説明いただく。令和6年度の園の実施状況と成果についてご報告いただき、延べ利用数38人。総利用時間150時間。制度利用をきっかけに入園に至った人数4名との情報提供いただく。利用者からの声として、利用のしやすさ。同じ年齢の子どもと関わることでの子どもの成長。保護者の時間確保が良い点とする一方で、利用可能施設の不足や手続きの煩雑さ、利用時間の拡充の希望が課題とされている。現場から見えた課題と今後の展望として、月10時間の利用制限による成長支援の時間不足。補助単価を適切にしてほしい。要支援家庭への情報提供の方法についてが上がり、中でも令和8年度からは給付化となるため、公定価格として設定される見込みであるとすれば、収益よりもこどもの育ちという理想論ではなかなか事業んび踏み出すことは難しいのではないかと感じる。現在、多くの園では「一時預かりとの違いが分かりづらい」「収益につながらない」との声が聞かれる。今後は一時預かり事業や地域子育て支援拠点事業との明確な区別がされ、制度としての独立性と持続可能な補助単価が設定されることを望む。園の目指す姿として、0歳から教育・保育が始まるという視点に立てば、「誰でも通園できる」この制度は、画期的な取り組みと言える。地域の子育て家庭にとって、安心して頼れる「かかりつけこども園」を目指し、全てのこどもの育ちを応援していく。
13:20~ 講演「不適切保育事案から学ぶ緊急時対応&保護者対応の実践/日本版DBSの制度概要」
弁護士法人かなめ 代表弁護士 畑山 浩俊氏

・不適切保育事案が報道される昨今で、不適切保育事案への対応はどうあるべきかについて、様々な事例を基に弁護士としてのご自身の体験談からご助言等をいただく。不適切保育事案の発覚パターンについて、大きく分けて保護者経由・職員経由・行政経由の3パターンがあげられる。保護者経由は、良識ある保護者は園長に直接相談を持ち掛けてくれるケースが多い。ただ、「不適切保育」と行く事態に感情的になり、集団で押しかけ暴徒化するケースもまれにあり、長時間居座る例もある。この場合は、感情的になっている保護者に誠実かつ「冷静」に対応することが大切である。職員経由は、職員は「意を決して」相談してくるケースが多い。この段階では、まだ保護者に情報が洩れていないことも多いので、迅速に対応すべきである。
この場合は、絶対に「事なかれ主義」を発動してはいけない場面。辛い道を選択することが最善の経営判断行政経由は、保護者や職員が行政担当者に相談・通報すると行政担当者から事実確認のために園に電話が入る。行政が「緊急性が高い」と判断した場合は、事前連絡なく立ち入り調査に来るケースもある。この場合は、行政調査に協力すべきだが、決して「なされるがまま」にならないこと。園で発生した事案なので園が「主体的に」動く事が大切である。ここからは、失敗例の考察をし、皆さんにどんどん質問していく。
ケース1で退勤中の保育士から保護者に呼び止められた事案について、どのように対応するかを質問。翌日に詳細を聞くとの回答に「間違いではないが、できればその日に職員から詳細を聞く時間を作る。その職員が一番の不安と恐怖を感じた当事者なので、ちゃんと向き合ってのケアが非常に重要。」このように、会場を移動しながら質問をするこれまでにあまりないとても楽しい研修となった。ケース2では、「モニターを見せろ」という保護者にはしっかりと「個人情報なので見せられません。」と対応することなど、まずは焦らず冷静に対応することの大事さを学ぶ。そもそも不適切保育とは何か?について、「不適切保育」の認識は曖昧で、自治体により定義が二分される。一つは保育所での保育士等による子どもへの関りについて保育所保育指針に示す子どもの人権・人格の尊重の観点に照らし、改善を要すると判断される行為。
二つ目は虐待と疑われる事案とされている。事実関係の調査方法についてでは、6W2H(いつ・どこで・だれが・なにを・なぜ・だれと・どうやって・どのくらいの頻度で)を用い、事実認定をする。その際に、「感情」「評価」は二の次である。「客観的証拠」とは、・発言の記録・カメラ映像や写真・メールやチャットSNSへの投稿や同僚や友人とにコミュニケーション記録があり、映像データがあれば、客観的な事実認定に繋がりやすいことや、モニター映像の開示を求められた場合、原則として見せないこと(個人情報保護・プライバシー保護・肖像権保護の観点から)をご提供いただく。保護者への説明について、保護者
説明会を要求されたら、開催が必要なケースを園のルールとして決めればよいことを学ぶ。最後に、不適切保育事案に対する初動対応について、まずは、災害と同じと考えてみる。さらに、基本方針策定が重要であり、●大まかな方針を決めることで、行き当たりばったりの対応を防止する。●法人運営の主要メンバー複数名で策定(独断で行わない)●事象発生当日中に実施(直接会えない場合はオンライン会議も可)●主要メンバー会議は事態発生後から複数回、小まめに実施。●基本方針はあくまで初期の目安。事態の進展に合わせて適宜修正。●対応ロードマップ策定を目安に対応の流れを可視化。の6つの事項を説明する。まとめに、不適切保育事案には被害者がいることを念頭に、真摯に向き合い対応すること。
「逃げない!隠さない!偽らない!」これができれば保護者との信頼関係は壊れない!そもそも過半数の保護者はいつも子どもをみてくれてありがとう!と思っているから!と激励の言葉をいただき、我々もとても勇気をもらった。すべて関西弁のとてもパワフルな研修でした。