【1】 研修会の概要

・研修会名:令和8年度給食・食育研修会

・開催日時:令和8年7月9日(木)10:00~15:30

・会場:ホテル青森(オンライン配信を併用したハイブリッド開催)

・対象者:県内保育所等の給食関係者(栄養士、調理師等)

【2】 開催目的

県内保育所等の給食関係者の資質や専門性の向上を目指して開催されました。子どもを取り巻く環境が目まぐるしく変化する中、給食・食育を通して園児の健やかな成長と発達を支える取り組みをさらに推進します。子どもの「食」の視点から豊かな人間性を育むとともに、発育期における栄養の意義や発達特性を総合的に理解し、現場での実践力を高めることを目的としています。

 

【3】 主な内容

 【健やかな心身を育む ~口腔機能の向上~】

日本歯科大学附属病院 口腔リハビリテーション科 歯科医師 田村 文誉 氏(オンライン講演)

乳幼児期における口腔機能の発達過程と、誤嚥や窒息事故を未然に防ぐための専門的な知見が詳説されました。食べる機能の獲得は、単なる月齢の目安以上に発達の順序性が重要であり、哺乳反射の消失から離乳食の開始、手づかみ食べを経て食具を使用するまでの各段階に応じた適切な支援の必要性が強調されました。具体的には以下の主要なポイントが示されました。

・口を閉じて食べ物を取り込み、正しく飲み込む機能を育てることの重要性

・離乳中期から後期における舌の上下運動や左右のすり潰し機能の獲得と、乳歯の生え方に即した食形態の選択

・窒息事故の原因となりやすいパンや米などの食品特性を理解し、潤滑油としての油分の活用や唾液分泌を促す工夫を行うこと

・咽頭を通過できるサイズは直径1cm程度であることを踏まえ、食材の大きさと崩れやすさを適切に調整すること

・安定した食事姿勢が咽頭後壁の前突を防ぎ、安全な嚥下を助ける食道入口部の開大に寄与すること

発達がゆっくりな子どもに対しては、強要を避けて五感に働きかけ、子ども自らの能動的な動きを引き出すダンスのような息の合った介助が求められるとの視点が共有されました。

 

【健やかな心身を育む ~食事の提供ガイドの理解~】

青森中央短期大学 食物栄養学科 准教授 森山 洋美 氏

改定された児童福祉施設等における食事の提供ガイドを主軸に、これからの時代に求められる個別栄養管理の在り方について解説が行われました。従来の集団一律の管理から、子ども個々の体格、身体活動量、嗜好プロセスに寄り添う個別対応へのパラダイムシフトが提唱されました。主な要旨は以下の通りです。

・成長曲線(発育曲線)を活用した客観的なアセスメントを行い、3か月単位の推移で個々の発育状況を線で捉えること

・PDCAサイクルを組織的に回し、給与栄養目標の設定から調理品質の管理、残食調査に基づく献立のアップデートを継続すること

・HACCPの概念に基づく徹底した衛生管理を行い、中心部温度75℃で1分以上の加熱殺菌や検食の保管を厳守すること

・食物アレルギー対応において、専用色の食器やトレーを採用し、複数の有資格者による二重チェック体制を確立すること

・栄養士、調理員、保育士が壁をなくして情報を統合し、多職種連携によるミール・チームとして支援に当たること

成長曲線は子どもの声なき訴えを可視化する対話ツールであり、数値を生活の悩みとして捉え直すことで、より一人ひとりに寄り添った食事提供が可能になるとの指針が示されました。

 

【令和8年度 給食・食育についてのアンケート】

青森中央短期大学 食物栄養学科 准教授 森山 洋美 氏

(アンケート作成・集計:青森県保育連合会給食部会)

本報告の開始にあたり、青森県保育連合会給食部会担当副会長の土屋隆治先生より、「給食を一口だけ食べよう」という声かけの賛否をめぐるネット記事をきっかけに、急遽現場の声を集めるため本アンケートを実施した経緯が説明されました。

続いて、同部会がまとめた結果に基づき、森山洋美先生より県内保育施設における給食・食育の実態について解説が行われました。調査では、園児が苦手としやすいピーマンやきのこ類に対し、小さく切る、人気の食材と混ぜる等の調理上の工夫が多くの園で実践されていることが分かりました。また、食育推進における取り組みとして以下の知見が共有されました。

・約9割以上の園で給食職員と保育職員の連携がなされており、多職種参加の給食会議が改善のハブとなっている現状

・栽培や収穫体験、簡単な調理手伝いを通じて、食材への興味や感謝の心を育む体験重視のアプローチの有効性

・レシピの公開や当日の給食展示を紙媒体やSNSで積極的に行い、保護者の悩みを受け止める伴走者としての役割

現場の栄養士や調理員が保育室へ出向き、直接喫食状況を観察してフィードバックを得る体制の構築が、さらなる給食の質向上に繋がることが再確認されました。

 

【4】 まとめ

本研修会を通じて、口腔機能の発達段階に適合した安全な食事提供と、科学的根拠に基づいた個別アセスメントの重要性が鮮明となりました。成長曲線やPDCAサイクルを共通指標とし、多職種が密に連携して子ども一人ひとりの発育プロセスに深く寄り添うことが、現代の保育現場における給食・食育の使命です。今回共有された客観的な事実と専門的知見を各施設の日常業務に還元し、子どもたちの笑顔と健やかな心身を育むための質の高い保育を創造し続けることが期待されます。